開発の経緯

ニュベクオ®錠300mg(一般名 ダロルタミド: 以下、ニュベクオ)は、Orion Corporation Orion Pharma社(以下、Orion社)で開発された非ステロイド性抗アンドロゲン剤です。ニュベクオは、極性基を有するピラゾール環等を有し、従来の抗アンドロゲン剤とは異なる特徴的な化学構造を持つ薬剤です。

ニュベクオは、in vitro試験において、アンドロゲン受容体(AR)へのアンドロゲンの結合を競合的に阻害し、ARの核内移行と転写活性を抑制しました。続く動物試験では、ヒト前立腺癌細胞株を移植した去勢抵抗性マウスモデルにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示しました。

ニュベクオの臨床開発は、2011年にOrion社により開始され、2014年からはBayer社との共同開発となりました。転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者を対象とした海外第Ⅰ/Ⅱ相試験及び海外第Ⅰ相試験の検討から、以後の試験での用法・用量を600mg1日2回投与に設定しました。

2014年からは、化学療法歴のない前立腺特異抗原(PSA)倍加時間が10ヵ月以下の遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌[nmCRPC(M0CRPC)]患者を対象に、アンドロゲン除去療法(ADT)併用下でニュベクオ群とプラセボ群を比較することを目的とした国際共同第Ⅲ相試験[試験17712(ARAMIS試験)]が開始されました。本邦では、2015年に日本人のmCRPC患者を対象とした第Ⅰ相試験が実施され、日本人患者におけるニュベクオの忍容性、薬物動態が検討されました。本試験結果より、当時実施中のARAMIS試験への参加が妥当と判断され、95例の日本人患者がARAMIS試験に参加しました。ARAMIS試験では、主要評価項目である無転移生存期間(MFS)において、プラセボ群に対するニュベクオ群の優越性が検証されました[ハザード比 0.413、p<0.000001(層別log-rank test、有意水準:両側0.05)]。本試験成績に基づき、各国で承認申請が行われ、優先審査品目に指定された米国では、2019年7月に早期の承認を取得しました。本邦では、2019年3月に承認申請を行い、2020年1月に「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌」を適応として製造販売承認を取得しました。

2016年からは、ADT開始後12週間以内の転移性去勢感受性前立腺癌(mCSPC)患者を対象に、ADT及びドセタキセル(1回75mg/m2を3週間間隔で6サイクル)併用下でニュベクオ群とプラセボ群を比較することを目的とした国際共同第Ⅲ相試験[試験17777( ARASENS 試験)]が開始されました。本邦からは、148例の日本人患者がARASENS試験に参加しました。ARASENS試験の成績に基づき、本邦では、2022年3月に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2023年2月に「遠隔転移を有する前立腺癌」に対する効能又は効果が追加されました。

また、2020年からは、AR陽性の根治不能かつ手術及び放射線療法の適応とならない局所進行又は再発・転移唾液腺癌の患者を対象に、ニュベクオの有効性及び安全性を評価することを目的とした医師主導の国内第Ⅱ相試験[試験20260(DISCOVARY試験)]が開始され、2022年からは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニストであるゴセレリン酢酸塩(以下、ゴセレリン)との併用群が追加されました。DISCOVARY試験(併用群)の成績に基づき、本邦では2025年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2026年3月に「アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌」に対する効能又は効果が追加されました。

4. 効能又は効果

  • ○遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌
  • ○遠隔転移を有する前立腺癌
  • ○アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行·再発の唾液腺癌

6. 用法及び用量

〈遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌〉
通常、成人にはダロルタミドとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈遠隔転移を有する前立腺癌〉
ドセタキセルとの併用において、通常、成人にはダロルタミドとして1回600mg を1日2回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌〉
ゴセレリン酢酸塩との併用において、通常、成人にはダロルタミドとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。